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国際化セミナー

「日中間の政冷経熱下に於ける今後の対中ビジネス」

 

 京都ビジネス交流フェア2006で行われました「国際化セミナー」で「日中間の政冷経熱下に於ける今後の対中ビジネス」をテーマとして富山県環日本海交流センター長(伊藤忠商事株式会社 元常務取締役)の藤野文晤氏に中国の動向や対中ビジネスのポイントについてご講演いただきました。

 

●日中関係の現状
 今一般に、中国へ進出していくことは危ない、なぜなら貧富の差も大きく、農民は暴動を起こしているという意見があります。しかし、我が国において対中貿易は対アメリカ貿易を抜き、1位 となり、矛盾した現状なのです。これから中国での仕事を考えておられる方は、どうしたらよいのか悩んでおられるのではないでしょうか。

  ここに私の考えを述べさせていただきますが、私の意見は今の日本において少数意見です。しかし、過去の歴史をふり返ってみても、少数意見が生きてきた国は、繁栄してきましたが、少数意見が葬られた国はどこかで崩壊をおこしています。このことは日本の歴史を見ても明らかです。

 現在の日中関係は最悪状態になりつつあります。政治の関係はよくないが、なんとか経済で関係をよくしたいという願望をもっているのです。日本人の70%は「中国が嫌い」、そして中国人も同じぐらいの割合で「日本が嫌い」と言っています。ボタンの掛け違いなのか、アジアにおける二大大国がお互いを認めたくないという状態です。しかし経済の相互関係は非常に強くなってきています。小泉内閣の9月まで日中関係は変わらないのか、重要な時期を迎えています。
写真:富山県環日本海交流センター長(伊藤忠商事株式会社 元常務取締役)藤野 文晤 氏
富山県環日本海交流センター長
(伊藤忠商事株式会社 元常務取締役)
 藤野 文晤 氏


●中国をどう見るのか?
 結論をいえば、中国は共産主義イデオロギーの国ではありません。圧倒的多数の日本人は、中国は中国共産党一党の独裁国家、体制国家と見ています。これは大きな間違いです。現代史を見ればわかるように中国が共産党となったのは、国民党と共産党の戦いの結果 です。それは、豊かなものと貧しいものの戦いであり、決してイデオロギーの問題ではありません。多数の農民が政権をとったのが中国なのです。共産主義の体制国家であったならば、1978年にケ小平が市場経済を掲げてから27〜8年で、10億ドルしかなかった外貨が現在8500億ドルを保有する国にはならないと考えます。GDPにおいては、フランスを抜き世界第5位となり、イギリスに肉薄しているのです。ケ小平は市場経済、民主化というツールを与えただけで、中国国民がそれに乗って走れるアイデンティティーがあったのです。体制国家に甘んじない、ある種の個人主義が中国人の中にあるのです。中国への誤った見方をすれば、入口でつまづいてしまうのではないかと考えます。中国の対外貿易は、アメリカ、ドイツに次ぎ、世界3位となっています。このような現状を謙虚に認めないといけないと思います。

 中国は農業、ものづくり中心で進んできたのですが、第3次産業が伸びてきました。その結果 GDPの上方修正をしました。13億人の住む国家ですから、第3次産業が伸びないわけがなく、税収も増え、国家財政もずいぶん豊かになってきています。今中国で考えられている政策は、華東地区および華南地区で稼いだお金をどうやって内陸に分配するかということです。これをやらないと中国は分裂してしまいます。富の分配をして、中産階級を増やすことが発展の継続と考えられています。大学卒業者がなかなかいきたいところへ就職できないという現状を解決するために、第3次産業を掘り起こしていかなければなりません。そうすることにより、私は、8〜10%の経済成長率が今後10〜20年は続くと考えています。20年経てば、中国のGDPはアメリカを抜くことは確実だと思っておかなければいけないでしょう。チャイナリスクといって、懐疑的になり中国への展開を差し控えるのは、わが国の将来に、巨大な機会を失うことになります。2008年のオリンピック、2010年上海万博が終われば何もないよという考えはおかしいのです。

● 中国人のアイデンティティー

 中国人は、儒教思想が中心であり、数千年の歴史の中で守ってきたものです。私は中国人の学生を知っていますが、よく勉強し、よく働きます。そして、父母に孝をつくすのが当たり前と言います。この発想は儒教からきているものです。中国人を支えているのは、武力ではなく、智なのです。中国脅威論とよく聞きますが、本当なのでしょうか。中国の歴史をふり返っても、植民地をつくったり、国を奪ったりしたことはありません。国境線には少数民族が存在し、ある種の軍事的脅威にさらされていますので、抑止力はつくらないといけないのです。しかし、自ら攻めていくことはありません。これがアメリカとの決定的な違いで、文化によるものと考えます。ひとつの大きな屋根の下に58の多民族が、大きな違和感なく暮らしているというのが中国の現実です。どうしてそんなことができるのかというと、中華文明という存在があるからです。 

 WTOへの加入、APECの開催、北京オリンピック、上海万博の開催など国際社会へ名乗り出たのです。その中国をチャイナリスクや中国脅威論で片づけてしまうと、我々は生き残れないのではないでしょうか。もちろん中国は問題をいっぱい抱えていますが、一歩一歩前進していくと思います。
 その大中華思想の中にASEANがあります。10カ国と手を繋いだのです。日本にも声をかけたのですが、日本は拒否したのです。東アジアが大きな中華の傘の下に入ろうとしているのです。そのような状況の中、日中関係がこのままでいけばまずいと考えます。対中国貿易の増加率を見ると、日本は10数%しか増加しなかったが、EU全体で20%、アメリカも伸ばしています。政治は経済の発展に奉仕すべきなのですが、経済がうまく交流できているから政治は悪くてもいいという国は世界のどこにもありません。今、日本人はそれを受け入れているのです。中国は日本との関係をよくしたいと考え、手を差し伸べてきています。ですからその手を握らないとだめだと思います。

●これからの中国ビジネス

 中国は、世界の工場を卒業したと言われるようになりました。家賃や労働力が高くなり、上海ではITなどの第3次産業が中心になってきたことからなのでしょうが、しかし、中国を一律に考えてはいけないのです。内陸部はまだまだ遅れていて、コストは安く、最先端技術ではなくコンベンショナル技術を必要としています。中国はマーケットであり、生産拠点でもあるという混じりあった大国という認識が必要です。

 また、中国は8500〜9000億ドル貯めた外貨を海外へもっていくことを考えています。例えば、日本へ来てM&A、合弁会社をつくるということなど、新しい発展がまだまだあると考えます。中国へ投資すれば損をすると言われていますが、統計などを見ると7〜8割は儲けています。確かに1割ぐらいの企業は儲かっていません。残りはとんとんくらいなのです。儲けていない会社が損をしたと声高にいうので、みんな損をしたように思っているのです。

 中国の国内市場は非常に拡大しています。確実に個人所得が上がってきています。現地に行けばよくわかりますが、内陸の田舎にそんなマーケットはないだろうと考えてしまえば、もうダメなのです。高速道路の総延長3万5千キロあり、20年以内に8万キロになり、アメリカに次ぎ世界2位になります。市場はどんどん開けてきていて、今までは無理だと思われていたことがかなりの勢いで実現されてきています。ウイグル地区と上海を結ぶ4100キロのガスパイプラインが出来上がりました。従ってその途中には石油化学コンビナートをつくることができるのです。我々のチャンスはいくらでもあるのに機会を喪失していると思います。日中間の話し合いが望まれるところです。

写真:セミナー風景

 
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