このシリーズは、「京都府モデル工場」(現在16社が指定され、指定期間満了後の企業も含めた有志約50社で「モデル工場会」がつくられています)として優良な工場を持って活躍されている中小企業を紹介し、先行き不透明な中、経営戦略のヒントを得ていただければと思い企画しました。
第3回の今回は、当センター協力会の会長であり、歯科用X線撮影装置の分野において世界でトップクラスの技術を持つ朝日レントゲン工業株式会社(正岡武志社長)を訪問しました。
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本社工場の火事で倒産寸前の危機に
同社は、歯科用レントゲン撮影装置の製造・販売会社として昭和31年に尼崎市で創業、設立しました。当時社員は、創業者の伊勢谷氏と後に二代目の社長となる内山氏を含む8人で、その一カ月後、以前一緒に仕事をしていた内山氏に請われて現社長の正岡氏が入社しました。
やがて株式会社島津製作所の下請をするようになり、仕事がどんどん増え、経営は軌道に乗ってきました。しかし、好事魔多しで、昭和37年、隣近所14軒を巻き込む火事を出し、本社工場が全焼してしまいました。
当時社長だった伊勢谷氏は、事業を転換し、「朝日レントゲン工業」を閉めようかとも考えていました。しかし、内山氏や正岡氏はサラリーマンから裸一貫で頑張ってきたこの会社を何が何でも存続させようと思い、大阪市に倉庫を借りて操業を続けました。
そんな時、島津製作所から従来の仕事の3倍の注文を受けました。工場長はとても無理だと判断しましたが、工場長補佐をしていた正岡氏の陣頭指揮のもと、外注を活用するなどして、3カ月間、ひげも剃らず、床屋にも行かず、がんばり通し、やり遂げることができました。このことにより、再建へ向けて大きな手応えを得ることになりました。
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仕事に育てられ、出会った人に育てられ
昭和39年には島津製作所との関係を強化、発展の狙いもあり、京都の久世工業団地に本社工場を移転しました。そして昭和42年、内山氏が社長に就任し、高度成長期の波に乗って経営は順調に推移しました。しかし、オイルショック後、不景気により会社経営が厳しくなり、内山前社長は心労も重なって、体調を崩し、昭和51年47才の若さで急逝しました。
これを受けて、当時島津製作所の仕事が65〜70%を占めていたこともあり、島津製作所との付き合いが深く、社内でも信頼の厚かった正岡現社長が39才の若さで社長になりました。
正岡社長のもと、同社は、取引先や大学から特殊な注文を受けても断らず、試行錯誤しながら造っているうちにノウハウがどんどん蓄積されました。そして、「朝日レントゲンに言えば何とかなるぞ」と高い信用を得ることができました。儲からない仕事でも我慢して受けていたおかげで、大学の先生方からいろいろと助言を得ることができるとともに、玄人筋からいろいろと仕事が来るようになりました。仕事に育てられ、出会った人に育てられてきたといえます。
また、20年前にNECマシナリー株式会社から半導体関連の受注を受けるようになり、島津製作所一辺倒から変わりました。好不調の波がメディカル関連と半導体関連とは違うため、会社経営としても良い結果を生みだしています。
こうして、同社は昭和37年の尼崎本社工場焼失、オイルショック後の不景気という2度にわたる倒産の危機を乗り越え、今では日本を代表する歯科用レントゲン撮影装置の製造・販売会社のひとつとなっています。
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世界最先端の技術開発力
同社の特徴は、新たな技術開発と品質向上へのたゆまぬ執念です。創業者の伊勢谷氏の「特異な市場で信頼を得るためには、開発型の企業を目指さなければならない。他のメーカーには造れない装置を開発してこそ、朝日の名が定着する」という企業理念を引継ぎ、売上の5%を研究開発費に、従業員の12%を研究開発に充てています。「年2〜3点は新製品を出す」をモットーに、大学との日頃の良好な関係を発展させた産学共同研究開発等を推進し、次代に向けての技術確立を目指しています。
世界最先端装置の開発に挑み続けた結果、断層機能を備えたパノラマX線撮影装置をはじめ、矯正診療に有用なハイパワーセファロ・断層撮影装置、高齢化社会と身障者に配慮した世界最速の社会福祉型高速撮影パノラマや可動型仰臥位撮影パノラマ、在宅診療で威力を発する世界最軽量の軽量ポータブ
ルデンタル撮影装置等を開発し、多くの医療現場で活躍しています。現在も世界初の歯科用パノラマコンピュータ断層撮影装置を開発し、薬事法の承認待ちの状態です。
同社のフランスやアメリカへの海外展開が、ほとんど展示会等で同社の製品が担当者の目にとまったことから始まっていることも、技術開発力の高さを物語っています。特に海外への販売促進活動を行っていないにもかかわらず、今では売上の35%を海外が占めるにまで至っています。
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「混流生産システム」
もうひとつ忘れてならないのは、効率的な生産システムです。実行すればよいと簡単に言いますが、当たり前のことを当たり前にすることは実は以外と困難なものです。しかし同社では、5S活動、目で見る管理、地道な改善活動などが当然のこととして実行され、定着しています。そして、特筆すべきは、今自動車業界で盛んに取り入れられている「混流生産システム」を15年も前から取り入れていることです。
この「混流生産システム」は、ひとつのラインに、いくつもの品種が流れるラインのことで、多品種少(変)量生産に適した生産システムです。同社は、見込み生産で中間在庫を持ち、注文を受けて完成品にしていますが、同じライン上で注文に応じて多様な製品の加工・組立をしています。具体的には、半製品をレールの上に載せ、工場内のラインを一周する間に一製品ごとに必要な部品を組み込み、完成させます。長方形のレール、四隅の回転板等全て手作りで、「半年来られなければ、どこか工場が変わっています」というくらい常に効率を追求し、実行した結果、生まれてきたシステムで、今でも繰り返しバージョンアップを行っています。
このシステムは、作業者や設備の負荷のバランスを均一にすることが管理のポイントのひとつですが、同社は徹底した多能工化に加え、製造、技術、営業という部門を超えた多能(社員)化を図ることにより、部門を超えた負荷調節が可能となり、少数精鋭の従業員による効率の高い業務執行を実現しています。これにより、世界を相手にした競争にコスト的にも対応を可能としています。
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自社製品の伸長と新たな展開
今まで述べてきた、卓越した技術開発力、効率的な生産システムに加え、徹底したエンドユーザー主義、アメリカで「タフボーイ」といわれる高く安定した品質などが高く評価され、新たな顧客をどんどん増やしていき、現在ではOEM生産も含めて自社製品が94%を占めています。
また、蓄積されたX線技術を活かし、産業用の非破壊検査装置の開発にも取り組んでいます。
長年にわたる下請から脱却し、世界に誇る技術開発力、品質等を武器に自社製品の製造・販売への転換に成功した同社の今後の活躍がますます期待されます。
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D A T A
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朝日レントゲン工業株式会社
代表取締役社長 正岡武志
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| 所 在 地 |
〒601−8203 |
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京都市南区久世築山町376番地の3 |
| TEL |
075−921−4371 |
| FAX |
075−934−3910 |
| URL |
http://www.asahi-xray.co.jp |
| 資 本 金 |
100,000千円 |
| 従 業 員 |
126名 |
| 事業内容 |
歯科用X線撮影装置の製造・販売
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| 設 立 |
昭和31年5月 |
 
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