| 第1回研究会を9月4日当センター研修室で開催しましたところ、企業、大学、研究機関等の皆様に多数御参加いただきました。 今回、植物性食品由来のアレルゲンに関する最近の話題と食物アレルギー対策の一つとしての食品素材の低アレルゲン化について、関係機関と共同で研究開発された低アレルゲン大豆加工食品を例に講演いただきました。その概要をご紹介します。 |
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| 講師 京都大学大学院農学研究科 小川 正 教授 |
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アレルギーの実態 近年、アトピー性皮膚炎をはじめ免疫疾患と診断される患者が増えてきており、アレルギーという言葉が日常化しています。実態把握、原因究明、治療法確立に向けた研究が盛んに行われていますが、食品成分に起因する食物アレルギーについては十分解明されておらず、有効な治療法がないのが現状です。日本人の平均タンパク摂取量のうち、米、小麦、大豆及びその加工食品からの摂取割合は減少していると言われながらも依然我々にとっての主要タンパク質供給源に変わりありません。 しかし、こうした食品素材はアレルギー原因の主食品であり、牛乳・卵・大豆・米・小麦は日本人の5大アレルギー食品と言われ、実に10人に一人が何らかのアレルギーという報告があります。食物アレルギーは乳幼児において、また環境アレルギーは比較的学童から成人高年層でそれぞれ増加傾向にあります。飽食の時代と言われるようになってからの食生活の変化がその背景にあると言えるでしょう。 |
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アレルゲンが原因 体外から体の中に侵入してきた生体由来の異物「アレルゲン」を撃退するために体内でつくられる抗体は、免疫グロブリンというタンパク質の一種で、いわゆるアレルギー症状を起こしやすい人は、中でも「IgE抗体」がつくられやすいと考えられています。このアレルゲンに係る調査研究が進むにつれて興味深い事実が明らかになっています。大豆のアレルゲンについての研究の結果、ダニアレルギーの主要アレルゲンと親戚同士(相同性の高い)であることがわかりました。さらに、大豆アレルゲン、ダニアレルゲン、パイナップルアレルゲン(ブロメライン)の間にはタンパク質の一次構造上の共通する部分があるようで、アレルギーの発症には生物の分類学上の類縁関係といったものを越えて、分子レベルで共通する構造や機能が関与する可能性が高いようです。 |
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植物に共通するアレルゲンに注目 近年、医療関係者の間で深刻な職業病として問題となっているラテックス(ゴム手袋)アレルギー患者がアボガド、リンゴ、バナナなどの果実に対してアレルギー反応を起こしたり、ジャガイモ、トマト、ニンジンとも交差反応を示すことが明らかになっています。花粉症の原因となる樺の木の花粉と果物アレルゲンの間には一次構造の上の高い相同性があることもわかり、植物由来の共通アレルゲンが広く存在することが明白となってきています。一般にアレルギーが花粉やダニ、ハウスダストのように空気中を漂って気道(呼吸器)粘膜を介して感作するものと、食品のように口からの摂取により消化管粘膜を介して感作するものに分けられ、それぞれ特有の免疫機構に依存するアレルゲンが存在するように考えられてきましたが、上記の事実はこれらの考えを覆すものです。 天然ゴムからなるラテックスアレルゲンは、御存知のようにゴムの木からゴム樹液を採取するのに木の幹に切り傷をつけて行われることから、ゴムの木にとってはかなりの障害・ストレスになり、言わばゴム樹液は感染防御タンパク質(抗原)の塊です。この種のアレルゲンは他にも存在しているわけで、現在盛んに遺伝子組み換え作物の開発が盛んに行われており、その安全性に関する評価項目のひとつに導入遺伝子産物に係るアレルゲン性が挙げられています。注意すべきは、感染防御タンパク質に属するタンパク質の遺伝子の導入に当たり、特定の害虫にしか作用せず人に対し問題がないとされても、全く別のカテゴリーとしてのアレルゲン性という視点からは十分吟味する必要があるということでしょう。 |
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| 低アレルゲン化食品の開発 食品アレルギーに対し有効な治療法が確立されていない今、食材からアレルゲンを除去する低アレルゲン化が積極的に進められています。その中で当研究室では、農林水産省をはじめ他大学や研究機関とともにアレルゲン低減化大豆加工食品の開発に取り組み、各種食品の創出に成功しました(右図参照)。 むすび アレルゲンの構造・機能とIgE誘発の関連性を研究解明することができれば、アレルギー発症予防に役立ち、アレルギー症状を抑えたり予防する食品開発の可能性が大いにあります。これからは、単に低アレルゲン化だけではなく、「抗アレルギー」といった概念、すなわち日常の食生活の中で アレルギー予防のための有効な食品成分を探求し、食材の選択・献立の作成の面での工夫といったことが 重要な課題として目が離せません。 |
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