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研究室訪問

立命館大学理工学部ロボティクス学科
杉山 進 教授

●マイクロシステム技術研究センター発足へ ●シンクロトロン放射光は学外にも開放


 
杉山先生は、5年前に民間の大手自動車関連企業の研究者から立命館大学の教授に転身されました。
 先生は、数ミクロンの小さな微細機械(マイクロマシン)やマイクロセンサ、マイクロアクチュエーター等の研究開発をするマイクロシステム工学を専攻されています。
マイクロマシン技術は従来の機械加工技術の概念を根本から変えるほどの技術といわれており、医療、バイオテクノロジー、精密機械をはじめ微細加工、組立て、半導体製造装置など、幅広い分野での応用が期待されています。

●マイクロ電気・機械システムを実現へ
 私は、自動車関連の民間企業で30年間半導体プロセス技術を応用し、マイクロマシン技術を使って、シリコンを材料にしたマイクロセンサの研究開発に取り組んできました。
 具体的には車載用、そのなかでも主にエンジン内でガソリンを最適に燃焼させるための、空気の量を圧力で計るセンサや、エアバッグシステム用で衝突を感知・認識しエアバックを膨らますセンサなどの基礎研究です。
 この蓄積した技術をマイクロシステム工学に生かし、次世代のエレクトロニクスとメカニクスが合体したマイクロシステム技術が産業を支えるようになると考え、私でお役に立てればということで本学に参りました。
 本学理工学部は、1994年4月に滋賀県の琵琶湖南東に位置するびわこ・くさつキャンパスへ拡充移転し、ロボティクス学科は光工学科とともに96年に新設しました。当初私は機械工学科におりましたが新設とともにロボティクス学科に移りました。
 21世紀社会を発展させていくために、人間を中心とする科学技術の構築が不可欠となっており、最先端のロボット科学技術に寄せられる期待は大変大きいものがあります。
 こうした要請に応えて開設したのがロボティクス学科です。
 私の研究室では、センサ、アクチュエータ、処理回路を同一チップ上に集積化し、サブミクロン(1ミクロン以下の細かさ)の精度で駆動、計測、処理を行うマイクロ電気・機械システムの実現と、産業分野への応用をめざした研究を行っており、それらを総合したマイクロロボットの製作なども行っています。

杉山 進 教授
杉山 進 教授(工学博士)
所 属 〒525−8577 滋賀県草津市野路東1−1−1
立命館大学理工学部ロボティクス学科
研究テーマ マイクロマシン、センサ、マイクロ電子・機械システム
●用途は産業に加え人間の生活分野も視野
 マイクロマシン技術を用いて作り出せる身近なものの例としては、体圧測定(床ずれ)センサなどが挙げられます。なぜ小さいものが良いかといいますと、測定する場合にセンサの存在が分からないぐらい小さなものの方が、取り付けられる側にとってはありがたい訳です。小さければ小さいほどどんなところにも取り付けられ、状態を正確に測定でき、センサ自体のエネルギー消費も少なくてすむことになります。
 センサの中でも私の研究室で今研究を進めているのは触覚センサです。物体を認識する五感の中でも、触覚センサの研究分野はまだ遅れているのです。
 たとえばロボットが仕事をするときを考えてください。物をつかんだ、持ったということを感知するには必ずセンサがいります。つかんだということを目で見ると同時に、重い、軽い、滑らかだ、でこぼこしているというのを触覚で識別するのですが、これには大小の差こそありますが力が作用しています。ですから、この研究は力・圧力の検出を柱にしています。
 このセンサを作る技術(プロセス技術)、そしてそれらを動かす技術、そこから出た情報を処理する技術、またコンピューターにつなぐ技術が必要ですから、電子回路の技術もというように盛りだくさんの研究をしているのです。
 この研究は人間の代替としてだけでなく、さらに人間の機能を拡張することで様々な応用が考えられる非常にニーズの高いものですが、現状の到達度は、目標に対して部分的には80%のものもありますが、1%くらいと思えるものもあってまだまだ低いところにあると認識しています。

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立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 マイクロシステム研究室/杉山研究室

●マイクロマシン技術は中小企業型
 受託研究も数多く行っています。
 例えば、小さいものを作るというプロセス技術を使って、マイクロコネクタを作る研究をしています。小さいセンサを作ってもコンピューターとつなぐコネクタも小さくしなければ意味がありません。そのためコネクタを今の10分の1のピッチを目標にしています。そうすると体積が1000分の1になります。実装技術と言っていますがそのための作る技術も研究中です。
 ある射出成型システムを製作している中小企業からは、「もっと安くて精度が高いセンサが欲しい」との要望がありました。市販されているセンサは高くて大きいというのがその理由でした。これまでの基盤技術をうまく活用して、安く、小さく、性能が良いセンサを開発しました。
 私はマイクロマシン技術は中小企業型だと思っています。設備が比較的小さくてすむからです。独自のアイデアがあって、種々のマーケットで、そして多品種少量のデバイスを出していけば十分世界が開けてくると思います。私自身、支援してくれる人がいれば、会社を作ってやりたいと考えているくらいです。

●マイクロシステム技術研究センター発足へ
 本学ではマイクロシステム技術の産学官連携研究をさらに推進するため、その中核となる「マイクロシステム技術研究センター」を来年1月くらいに立ち上げる予定をしています。私たちが持っているマイクロシステム技術のシーズと、ニーズをお持ちの企業の方と交流する場を設け、的確にそれを把握し、解決しようというものです。企業の皆さんが門をたたきやすい形にしようということでもあります。
 すでに京都府中小企業総合センターから、マイクロ表面加工研究会を9月くらいに開かないかという話をいただいていますが、私たちが持っている研究者のネットワークと、センターがお持ちの中小企業のネットワークをジョイントする形になります。うまくいけば、さらに大きな輪になる可能性があります。
 これまで私たちが研究している成果を電気、機械、ロボットといったいろんな学会で積極的に発表しており、その関連の展示会、例えばマイクロマシン展とかにも出展しています。最近は特別に大学用のブースを作って頂きますので助かっています。京都では昨年産学官新技術交流フェアにも出展しました。それにとどまらず私自身が本学のネットワークを通じて、「こういう技術がありますが、どうですか」という売り込み活動も行っています。これからは、研究室に閉じこもるのではなく、外に自ら出ていき知っていただく時代ではないかと認識しています。

●シンクロトロン放射光は学外にも開放
 また、本学には全国の私大で唯一稼働しているシンクロトロン放射(SR)光発生装置をSRセンターに設けています。シンクロトロン放射光というのは、高速で円軌道を周回する電子から放射される光のことで、光の取り出せるライン(ビームライン)が16本あります。
 ビームラインはそれぞれ用途が異なり、微細加工や組成分析、結晶解析、X線顕微など目的により使い分けます。
そのうちの3本をマイクロマシン用にセットアップし、ミクロン、ナノの微細加工を行う為に使用しています。
このSRセンターは産学官連携を基本としており、装置は学外へも開放しています。利用形態は、主にスポット利用、委託分析・加工、委託研究、共同研究などがあります。
 現在、利用いただけるビームラインは14本あるのですが、企業の技術者が来られて自由に使っていただく占有ラインが2本、X線顕微鏡が1本、8本は物理化学的な分析・解析用で微量の元素の分析などが可能です。
 研究施設は教育機関でもありますから、カリキュラムに実習を入れて放射光に接する機会を設けています。学生達には、このシンクロトロン放射光に接するチャンスを是非とも生かしてほしいと考えています。
 しかし、このような最先端技術も実はローテクの上に成り立っているのです。そのためには極端ですがたとえば図面が描ける、のこぎりややすりが使える、ハンダ付けができるという様な基礎技能を身につけることは非常に大切であると考えています。
シンクロトロン放射光発生装置のあるSRセンター
▲シンクロトロン放射光発生装置のあるSRセンター
シンクロトロン放射光を使って作られたマイクロマシン
ワブルモーター用Ni構造体
櫛歯電極型アクチュエーター用Ni構造体
(ワブルモーター用Ni構造体・直径1mm高さ100ミクロン)
(櫛歯電極型アクチュエーター用Ni構造体・約2mm四方)

アクチュエーター色 電動モーターや油圧メーター、シリンダーなどエネルギーや電気信号を
機械的な仕事に変換する装置。
センサー色 感知器、検出器
マイクロシステム 微小電気機械システム
ミクロン 1ミリの千分の1
ナノ 1ミクロンの千分の1(1ミリの百万分の1)
デバイス コンピュータなどの電子機器を構成する回路・装置

シンクロトロン放射光  光速に近い速さで円軌道を周回する電子が磁場によってその軌道を曲げられる時に発生する光であり、その輝度は従来からの光源からの光に比べて桁違いに高い。
 しかもその波長は赤外・可視光、真空紫外線からX線にいたる広い領域にわたっている。
放射光の特徴 (1)極めて明るい光
(2)細く絞られ、拡がりにくい(指向性のよい)光
(3)赤外線からX線までの広い波長領域の光

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