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元気ビジネス最前線

夜の祇園町 パンを売り歩く男の物語

 その昔、祇園界隈を高級スーツに身を包み、高級外車でパンを売り歩く男がいた。
 そして今、この男性が起こしたパンの製造・販売会社は、全国21都道府県に480の販売拠点を持つまでに業容を拡大した。
 「今の会社があるのは90パーセントが運。7パーセントがスタッフの努力で、残りの3パーセントが自分の努力」と謙虚に語るこの男性、津野社長が起こした全国区の「パン屋」(株)ボローニャを紹介します。

○不動産屋からパン屋へ転身
 (株)ボローニャの津野社長は不動産業から転身してパンの販売を始めた。意外なことに、パン製造や販売の経験は全くないという。畑違いの他業種から経験もノウハウも何もないパン製造・販売業へ進出したきっかけは、不動産価格の高騰を抑制するために、金融機関の不動産業向け融資の総量規制が行われたことである。平成4年のこの時、不動産業に見切りを付けて「デニッシュ食パン」を仕入れて、販売することを始めた。
 それでは、なぜデニッシュ食パンなのかと疑問に感じる。
「もともと食べることが好き。食べてみておいしかったのでいけると思った。」と話してくれるが、試行錯誤と一瞬のひらめきがそこには存在していたのだろう。
 ここで、創業当時の苦労話というか、笑い話をひとつ聞かせてもらった。
 「それまで羽振りが良かったので高級スーツや外車は持っていたけれど、パンを運ぶためのバンやパンを売るときに着るトレーナーやジーンズがなかった。ダブルのスーツを着て外車にパンを積んで夜の祇園を売り歩いた。
 外車を下取りに出して、バンを買おうとしたが、お釣りの準備ができないのでと自動車販売会社に断られた。」

○商品へのこだわり―パンのサイズは3斤がベスト
 同社の「デニッシュ食パン」は、3斤サイズ1200円で販売されている。買う側にとっては時として不便さを感じるサイズ、価格であるが、パンを焼き上げる上でこのサイズが最良の品質を引き出すことができるそうだ。事実、取材を終えた後、同僚達に他社の「デニッシュ食パン」も含め評価を聞いたところ、同社の商品の評判が総じていい。「食べやすい。イメージするよりも軽いし、ついつい手が伸びる。」そうだ。サイズのことも含めしっかりと顧客の支持を獲得している。
 同社は主力商品である「デニッシュ食パン」のほかに次々と多くの商品を世に送り出している。3種類あるジャムは、100パーセント国内の契約農家で栽培されたフルーツを使用しているし、社長自慢のチーズケーキはフランスから輸入した高級チーズを使うなど、この辺りにも商品へのこだわりを垣間見ることができる。

○他社参入―関知せず。
 平成5年、祇園に1号店を出店し、順調に売上を伸ばしていったこの頃、東京のテレビ局に取り上げられ、その後、たびたびマスコミで紹介されるうちにブームに火がついた。おしゃれなパンとしてのイメージをしっかりと確立することができた。
 既存のベーカリーにとって「デニッシュ食パン」は、参入するに当たりそれほどの困難が伴うものではない。新規開業の業者も相まって、今や、どのパン販売店、スーパーのパン売場を見ても「デニッシュ食パン」が並んでいるといった状況である。これについて津野社長は、「関知せず」の姿勢を崩さない。自社商品への絶大な自信がそう言わしめているようだ。

○目標 カフェ出店全国200店舗!
 ますます業容拡大をめざす同社であるが、事業の次の核を販売部門を併設したカフェに置こうとしている。
 先日、福岡県久山町にオープンした大規模ショッピングセンターにも出店したほか、全国に200店舗を展開することを目標にしているが、ここには、従来、販売のみを行ってきた各店の集客力を高め、店舗運営効率を上げるとともに、サンドイッチやトーストなどのメニューを提供することにより、これまでにない「デニッシュ食パン」の新しい食べ方を提案する狙いがある。
カフェ展開に当たっては、厨房の規格を統一し、ユニット化を進めるなど、イニシャルコスト(初期投資額)の低廉化にも注力している。
 また、契約工場での製造に代えて自社工場を建設することにも積極的である。現在、石川県に中部・北陸地区を統括する工場を建設するべく準備中である。

【会社の概要】
社 名 株式会社ボローニャ
代表者 津野庄蔵
創 業 平成4年10月
業 種 パン製造・販売業 飲食店業
資本金 1000万円
従業員 34名
所在地 京都市下京区堀川通綾小路下る綾堀川町291
TEL 075ー343ー0628
FAX 075ー343ー0658
ホームページ http://www.bologne.com/
 
(取材を終えて)
・主力商品である「デニッシュ食パン」の商品力の強さ
・マスコミをうまく活用し、ブームを巻き起こすまでにプロモーションを巧みに展開したこと
 そして、これにより、
・「京都祇園ボローニャ」というブランドを確立できたこと
 が、同社の成功の秘訣として挙げられようが、それとともに、取材を通じて強く印象づけられたことは、創業社長にありがちなワンマンさがないこと。そして、自らの功績を全体の3パーセントであると評する謙虚な社長のもと、経営についてフランクに語り合えるフラットな組織体制が成立し、意思形成を迅速に、かつ、機動的に行える環境に同社があることである。
 @パンの仕入・販売→A1号店の開店→Bパンの製造企画→C契約店舗・工場の拡大→
 D取扱商品の拡大→Eカフェの展開→F自社工場の建設・製造拠点の集約化
と、同社は創業以来7年余りの間に急拡大を果たしたが、その間、時流を巧みに捉え、タイミングよく次の事業のタネを蒔き続けることに成功してきた。
 今は、激動の大競争時代であるといわれる。このような時代状況であるからこそ、時流を的確に捉え、迅速に対応することに成功した者こそ「真の成功者」である。当社はそんな成功者のひとつであろう。

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