![]() | 府内各地の経営トップにお話をお伺いするトップインタビュー。今回は、株式会社仙太郎の田中 護社長をお訪ねしました。同社は、京都市下京区に本店を持つ和菓子のお店ですが、一方、八木町神吉で、和菓子の主原料である丹波大納言、丹波栗、もち米等の栽培にも取り組んでおられます。同社の素材へのこだわり、そしてその行き着くところの農業への取組み等についてお伺いしました。 |
−会社の概要をお聞かせください。
社長 創業は明治19年で「ふかし饅頭や」でスタートしました。私で三代目ですが、四代目はいま27歳です。終戦直後、世の中の人が甘い物に飢えていた時代に、その当時としては規格外の餡のはみ出した、大きな「ご存じ最中」を作りました。これが好評を博し、菓子屋としての地盤を固めたのが二代目です。この最中の餡に欠かせないのが丹波大納言です。
−全国に餡をふんだんに使ったお菓子は数多くありますが、その中でも、貴社のお菓子は評判がいいですね。
社長 まさしく丹波の小豆のおかげです。日本中どこを探しても、これほどの小豆はありません。丹波の風と土が育ててくれるこの小豆ですが、最近は何となく以前よりも香りが少なく、表皮の弾力、そして炊いて餡にしたときの皮質の柔らかさが薄れてきたように思えます。そこで、業を煮やして、自分で理想の小豆を作ろうと思い立ちました。八木町神吉の人々の御協力を得て、この地に農場と工場と自宅を作らせていただき、ここに移り住んだ訳です。
−原材料の栽培から取り組まれる例は珍しいと思うのですが、どの位の規模で、どんなものを栽培されているのですか?
社長 現在2haで、小豆、栗、もち米のほか、柚子、梅、しそ、黒豆の畑があります。他にも、よもぎ、山椒、桜の葉、山帰来の葉、檜葉(ひば)など自生するものも全部いただいています。芭蕉の句の「おらが世やそこらの草も餅になる」を「仙太郎そこらの草を餅にする」と読み替えて悦に入っています。
もちろん、この農場ですべての材料をまかなえる訳ではありません。例えば、小豆は、ここで育てたものを種(たね)として、いくつかの農協を通して農家の方々にも栽培していただいています。元種(もとだね)としたのは、亀岡の馬路、昔、天領地の小豆として有名な「馬路大納言」です。俵型で、いわゆる角張った粒状、大きい粒が外見上の特徴です。炊き上がった粒餡は、香り高く、表皮は柔らかく、つややかで特別美味です。

−材料は、小豆の他にも、ほとんど国産のものを使用されているとお聞きしていますが、そのこだわりについてお聞かせ下さい。
社長 私達は、「身土不二」という言葉を菓子作りの基本理念にしています。即ち、身(身体・健康)と土(風土、環境)とは、別物ではない(不二)。我々が生まれ育った風土が育んだものを食するのが「身体に一番優しく、なじみやすく、即ち美味しい」という意味です。
そこで私達は、素材は全て自分の住んでいる近くから産まれるもの、せめて国産のものにこだわります。私達が、菓子作りで国産の素材を手に入れようとすれば、日本の国土の「土」の部分が守れます。そして、そこで栽培する植物がCO2ならぬO2を供給してくれます。また、根が水を保ちます。そして、農業に従事する人を増やすことにも繋がります。国産のものは、舶来のものより高くつきますが、マクロ経済からみれば、理にかなっていると信じ、国産のものにこだわっています。
京都の和菓子が全国に冠たりえたのも、丹波の小豆、栗、自然薯、近江の米、大和の葛など、数え切れないほどの良質最高の素材があったからです。
ところで、国産のものが身体に優しく、なじみやすく、美味しいと申しましたが、この「美味しい」の理屈から、私達は、身体が決して欲しがっていない着色料、防腐剤、その他の添加物は一切使いません。少々地味で日持ちがしなくても、その部分は我慢しています。感性(見た目)よりも機能(美味しく身体によい)を大切にしていきたいと思っています。もっとも、この「美味しさ」の究極は、食される側(お客様)の身体の調子、即ち、空腹、渇きに勝るものではありませんが……。
−農場を見学させていただきましたが、畑以外にも肥料作りのハウスや、陶芸の登り窯、かやぶきの茶室等、いろいろ施設がありますね。
社長 菓子の製造過程で出るあんかす等を土に戻すためのハウスです。業者に捨ててもらった方が経済的ですが、オーバーに言えば、地球経済からみれば……と頑張っている部分です。また、良質のあんかす等は、近くに住む豚に食べてもらっています。ブーブーと文句ならぬ鼻をならして喜んで食べてくれますので、経費をかけてでも食べてもらうようにしています。
登り窯は、私達の菓子を作る技が、陶芸の技と大変酷似しているところから、大義名分は「菓子を作る技の錬磨」「あんこと土の相似と相違の追究」、本音は「菓子皿をも自分達で作りたい」ということです。年2回、400束ずつ赤松の割木を自分達で作り、灰にしてしまっています。店頭の皿は、殆ど全部、私達が交代で6昼夜、1200度で焼き〆したものです。
茶室は、茶道における菓子の存在理由を見つめ直すため(高めるため)のものです。色々な人が茶会を催されていますが、社員の利用の少ないのが気がかりです。これから研修の場、楽しみの場として活用していこうと思っています。

−社長の経営哲学を一言で言いますと?
社長 「近き者悦べば遠き者来たらん」私にとって一番近いのは社員です。その次はお取引先です。「お客様よりもまず社員、お取引先を悦ばすことが第一」と思っています。
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