前頁目次次頁
報告書

エコツ−リズムに関する調査報告書

エコロジ−の源流「京都」

〜日本のエコロジ−再発見の旅〜

 地球温暖化、廃棄物処理問題等、地球環境の危機的状況が叫ばれ、地球規模での環境保護活動・意識が大きな高まりを見せており、昨年12月にはここ京都で地球温暖化防止京都会議が開催されました。
 こうした中、観光の分野においても、観光が優れた自然環境や文化遺産等を対象にする以上、環境保護は重要な課題であり、観光がもたらす経済的収益が環境問題に積極的な役割を担うという観点から「エコツ−リズム」という考えが世界各国で広まり、21世紀型の新しい観光としての発展が見込まれています。
 京都府においても、本年3月に策定した「京都府観光産業振興ビジョン」の中で、「京都エコツ−リズムの創生」をリ−ディング事業として位置付け、推進することとしています。
 当センタ−では、京都府内におけるエコツ−リズムの推進の一助となるよう、京都とエコロジ−の関わり、国内外の取組事例、地域づくり、先進地事例、展開方法等を示した「エコツ−リズムに関する調査報告書」を刊行しましたので、その概要をご紹介します。


photo★この報告書をご希望の方は、郵便切手(240円)を同封してお申し込みください。
申込先:経営課 商業係
    TEL 075-315-8622
    FAX 075-315-9496



1 観光・エコロジ−と京都の役割
2 国内外でのエコツ−リズムに関する取組
3 地域づくり先進地事例
4 京都府内各地域におけるエコツ−リズム推進の検討例
5 「京都エコツ−リズム」推進方法の考え方



1 観光・エコロジ−と京都の役割

(1)観光を取り巻く変化とエコツ−リズム
 モノの豊かさを中心としたこれまでの価値観が、精神的な充足感や心のゆとりを求める方向に変化してきたこと、長期にわたる景気の低迷や週休二日制の普及に伴う自由時間の増大などが、観光のあり方に大きく影響を与えています。
 平成6年の「余暇と旅行に関する世論調査」(総理府)によると、観光の目的は、「温泉に入る」「珍しい料理を食べたりショッピングをする」「郷土色豊かな伝統行事に参加する」等、安くて近くて短期の実のある観光を志向するようになっています。こうしたニ−ズに対応して、観光地では、地域特性を活かした新しい観光を実現しようという発想を重視し始めています。
 一方、地球環境の危機的状況が叫ばれ、地球規模での環境保護運動・意識が大きな高まりを見せている今日、観光の分野でも、観光開発や観光行動が環境に及ぼす負荷をある程度までに抑え、観光地の環境を保持することが重要な課題となってきました。
 このような状況の中、エコツ−リズムという考え方が唱えられ、当初の、単に優れた自然・文化環境を有する地域に旅行するという形態から、観光客が地域の環境保持に留意しゴミ回収運動をしたり、観光地の資源の保護のために募金活動を行うなど、範囲を広げ推進されてきています。

(2)京都府におけるエコツ−リズムの推進コンセプト
 京都府においてエコツ−リズムを推進するには、京都の持つ地理的・気候的条件や文化的背景を考慮した活動を展開する必要があります。
 京都文化をエコロジ−の観点から見ると、茶道の重要要素である茶庭の築庭のように多大な人手をかけながらそれを感じさせることなく自然のあるがままの姿が表現される、というように、自然と人間の調和が、単なるエコロジ−観にとどまらず、文化や芸術のレベルまでに昇華させているところに特色があります。
 一方、府内の農山漁村では、地場産業の発展と共に古くから物流や人々の交流システムが確立し、農山漁村の風景や人々の生活・文化の営みが脈々と受け継がれ、これらが他地域に比べ良好に保存されています。
 これらのことから、府内各地の優れた自然環境のみならず、悠久の歴史の中で環境との調和を図りながら発展してきた京都が持つ生活、文化、産業すべてを対象としてエコツ−リズムを展開することができます。

2 国内外でのエコツ−リズムに関する取組

(1)海外の事例
・アメリカ:国立公園の入園料が公園の保護費用の一部に充てられており、公園内には、パ−クレンジャ−と呼ばれる地質学、動物学、生物学などの専門官が配置され、入場者からの質問に答える一方で、ツーリストの環境への関心の喚起に努めています。
・イギリス:「エコツ−リズム」より「グリ−ンツ−リズム」という言葉がよく使われています。これは、地域社会と一体となって、自然のみならず、地域社会の文化、歴史、経済を守り育てていこうというものです。
・ドイツ:環境先進地へエネルギ−、交通、ゴミ処理、景観保護、市民意識、政策を含むコンセプトを視察するツア−が多く出ています。
・コスタリカ:コスタリカは中米にあり国土の25%が自然保護区で、18の国立公園を持つ環境保護先進国です。雄大な自然を求めて世界各国から多数の観光客を集めており、エコツーリズムの先進国です。

(2)国内の取組
 旅行業者のエコツア−の実施状況、観光地における環境保全の取組、国の関連施策、地方公共団体の取組状況、京都の取組状況を紹介しています。

3 地域づくり先進地事例


(1)大分県湯布院町
 昭和30年に由布院町と湯平村が合併して誕生した湯布院町は、「産業・温泉・自然の山野の3つを統合しダイナミックに機能させていく」という基本方針が、保養温泉地構想の始まりであり、現在まで引き継がれています。
 また、「社会教育はすべての行政に先行する」として、社会教育、公民館活動の振興を掲げ、町づくりに積極的に参加する意欲と能力を持った住民を育てることを目標にしました。
 「ゆっくりと時間を過ごせる保養地づくり」という明確なコンセプトによる行政・民間一体となった地域づくりが、今日の湯布院の成功の鍵といえます。

(2)京都府美山町
 美山町のグリ−ンツ−リズムの基本コンセプトは、「美しい農村景観、美山らしさ、個性を大事にした住み良い農村空間を形成することにより、住民が誇りを持って生活し、後継者が定住すること」です。
 公的施設の運営を町が支援し、農産物直売等の支援を農協が担当し、補助事業の導入に府が支援を行うというように役割を分担しています。
 より交流を深めるため、京阪神の美山ファンとの交流会や美山町産品の販売店を京都市内に開設するなどの取組みの結果、単に訪れるだけでなく定住する人も増えてきました。

4 京都府内各地域におけるエコツ−リズム推進の検討例

(1)北部地域
 天橋立、琴引浜などの自然、丹後ちりめん、黒谷和紙などの資源に、地域ガイドの養成、交通アクセスの整備など、それぞれの資源を「京都」「エコ」という観点から付加価値を加え情報を整理すれば、新しい観光の可能性が大きい地域です。

ふるさとの資源   (北部)
photo

伊根町 千枚田

photo

綾部市 黒谷和紙

(2)中部地域
 茅葺き民家等の農山村風景や芦生原生林等は、エコツ−リズムを推進する上で貴重な資源となります。その資源を有効に活用するための仕組みづくりが課題となります。

ふるさとの資源   (中部)
photo

美山町 茅葺の里

photo

美山町 芦生原生林

(3)南部地域
 歴史遺産を活かした取組みの「歴史街道計画」のメインル−ト、宇治茶や乙訓の竹林、「ビタミンαミュ−ジアム」事業というような、歴史、自然、科学を組み合わせた新しい形のエコツ−リズムが展開できる可能性の大きい地域です。

ふるさとの資源   (南部)
photo

長岡京市 竹林

photo

宇治田原町 茶畑

5 「京都エコツ−リズム」推進方法の考え方

 エコツ−リズムは、地域の自然環境や地域文化の持つ理念・哲学を観光商品として売り出すため、地域が持つ自然環境、地域文化の優位性、付加価値が何であるのかを自らが鮮明にする必要があります。
 エコツ−リズムを推進するためには、受入主体となる組織づくりと担い手として核となる人材の育成が必要です。受入主体には、農業者、商工業者、サ−ビス業者、NPO、自治体等の各層が主体的に参加し、「地域を経営する」という思想を持った地域づくりを行うことが重要になります。また、農林漁業体験のインストラクタ−や自然・地域文化を説明できる専門ガイドの存在が大きな比重を占めてくるため、人材の発掘と自治体等の公的主体によるマニュアル作成や研修会の開催等による人材育成措置をとることも重要です。
 エコツ−リズムは現時点ではまだ、一般的な観光として認知されているとは言えないため、市場のマ−ケティング、それに連動した地域づくりから始める必要があります。観光客が地域に何を求めているのかを、地域の持ち味を前面に出したモニタ−ツア−や大都市圏でのアンケ−ト等で把握すること、が第1ステップです。また、エコツ−リズムを推進する地域が農山漁村地域である以上、都市との持続性のある交流事業を行い、交流のノウハウ、文化の伝え方、体験の仕方等を学ぶ機会をつくることも重要です。その上で、従来からある地域資源に限定する必要はなく、新たに創造開発した資源であっても構いませんが、「目玉」で地域の顔づくりをすることが有効になります。
 エコツ−リズムを推進するためには、宿泊施設の整備、都市住民のニ−ズと農村の期待とのギャップ解消、交流事業等における地元住民とボランティアの分担等が課題となってきます。


前頁目次次頁

Go_to_Home_Page Index